「ハーフ還暦」に思うこと
なんじゃそりゃあ。
還暦は60歳で、ハーフだからその半分で、30歳…。
はい、独身女は30歳という言葉にとかく敏感です。
「アラサー」「30歳からの基礎化粧品」、女子同士の会話に登場する「30までに結婚したい」「30までに子供ほしい」などなど、とにかく「お前もう若くないんだぞ」「若い女としてキャーキャー言ってられんぞ」「可愛さだけで通用せんぞ」「ていうか結婚まだなのか」と、脅しをかけてくる「30歳」という言葉。
あーなんか、頭痛くなってきた…。
そんな、避けては通れないがいささか憂鬱な門を、ギラギラに塗りたくって、「あなたの人生はここから始まるのよ!さあ!これからなのよ!」と景気よくやるイベントが、「ハーフ還暦」らしい。
少し前になるが、3月20日発行の日経MJで取り上げられていたのだが、その内容はこのようなものである。
港区の一軒家の一室で、「30」とかたどったバルーンで部屋を飾り、肩を出したドレスを着た30歳の女性たちが、シャンパンを飲みながら、これからの人生を祝福する。「平子理沙ちゃんみたいになりたい」「30歳になるのが怖かったけれど、これからも仕事やプライベートでどんどん輝きたい」…。前向きな女性像が、そこには描かれていた。
記事を一通り読み終わったときの感覚が、何かに似ている、と思った。
あれだ、美魔女を初めて知ったときだ。
テレビなどで取り沙汰され、今や多くの人が知っている「美魔女」という言葉。
見目麗しいお姉さまが、実は中学生のママだったり、50歳をゆうに超えていたり。彼女たちの美にかける思いや努力やお金が、時に狂気じみているように見えたのを、面白がって、でもどこかで「そこまでしなくても…」と見ていた、私もそのひとりだった。
そう、心に『歳相応』を掲げているのだ。こういう、「年齢に抗う行為」に違和感を覚えたとき。
だけど、私だってあっという間に30歳になってしまう。
そんな「まだ若いし~」とか言っていられるほど、私も馬鹿じゃない、少なくとも馬鹿じゃないぶっている。
というわけで、もう一度その記事を読み直してみた。そして思い出した。
ホテル女子会とか、なんだかこそばゆいけれど、お洒落をしてみんなで集まるのは確かに楽しい。テンションがあがる。そう、私だって女の子だもん。
ネイルだって、すぐ替えに行かなきゃいけないけれど、テンション上がる。指先がかわいいとうれしい。カクテルだって、かわいい色だと、なんかもじもじしちゃうけど、あ、かわいいと言えなくても、(かわいい)と思っている。テンション、あがる。
じゃあ、テンションが上がるとどういいのか。なんだか、もう少し頑張れる気がするのである。
自分に少しのお金をかけること。節目やきっかけをあえてつくること。
それだけで、あー自分って大切なんだよなあ、こんな風に変わったよなあ、と気づく。
自分に少しだけ目が向くことは、ちょっとだけ祈りに似ている。
祈りに似ている、思ったら、SNSに突然登場して、無邪気に人を傷つける華やかなイベントでさえも、ちょっとだけ許せそうな気がした。